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2024年3月31日まで!事業承継の税制特例を活用すると、贈与税・相続税を最大100%節約できます。
「事業承継税制」ってどんな制度?
中小企業の特徴として、経営者が株主としての役割も果たしているケースが多いです。
このため、事業承継の際には、経営権とともに自社株式の移転も後継者に行われることが一般的です。 事業承継の方法としては、社内での承継やM&Aがありますが、このような場合には自社株式の売却が行われます。
一方、家族間での事業承継では、生前贈与や相続を通じて株式が移転することが主流です。 経営状況が好調の場合、自社株式の価値は高くなり、その結果、贈与税や相続税の負担が増えることが考えられます。これにより、経営資金が圧迫され、事業承継がスムーズに進まないこともあります。
このような問題を解消するために、2009年度に事業承継税制が導入されました。 この税制を適用することで、事業承継に関連した自社株式の取得時の贈与税や相続税の納税を猶予されることができます。そして、特定の条件を満たす期間が経過すると、その猶予された税額が免除となる利点があります。
2018年度の税制改正では、事業承継税制の適用範囲や条件が10年間限定で緩和され、よりアクセスしやすい制度へと変わりました。さらに、2019年度には、個人を対象とした事業承継税制も追加されました。
事業承継税制が設けられた理由
事業承継の際の贈与税や相続税は、後継者の経済的な重荷となることがよくあります。
例えば、現預金5,000万円を贈与された際、2,049万5,000円の贈与税は、受け取った現預金から支払うことが可能です。しかし、自社株式が贈与された場合、それを直接税金として納付することはできません。その結果、後継者は税金の支払いのための追加の資金を確保する必要が生じ、納税の重圧が増します。
また、相続税に関しては、相続が始まった日の次の日から10ヵ月以内に納税を完了させる必要があります。もし、突然の事態で先代経営者が亡くなった場合、後継者は限られた時間内で税金の支払い資金を確保するプレッシャーに直面します。期限内に納税できないと、延滞税などの追加の負担が発生し、税金の総額が増加します。さらに、予想を超える高額の相続税に直面した場合、後継者が金融機関からの融資を求める事態も考えられます。
これらの課題を解決し、後継者の税金の負担を軽減するために、事業承継税制が導入されています。
事業承継税制の仕組みについて
事業承継税制を適用することで、後継者が非上場の自社株式を取得した際の相続税や贈与税について、納税猶予を受けられる条件が整います。この納税猶予を維持したまま、一定の期間条件を適切に遵守すると、その税金は一部または全額が免除されます。特に特例措置を適用した場合、相続税は80%または100%、贈与税は100%が免除される可能性があります。
事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」という2つの制度が存在します。どちらの制度を選択するかによって、税額の猶予範囲や対象となる株式の数などの詳細が変わります。これらの違いを明確に理解するための比較表も用意しています。
2018年の税制改正で、事業承継税制をさらに利用しやすくする目的で新しい特例措置が追加されました。この特例措置の中で、特例承継計画の提出によって、どの株式が納税猶予の対象となるか、またその割合が拡大される仕組みが設けられています。当初、特例承継計画の提出期限は「2023年3月31日」とされていましたが、2022年の改正により「2024年3月31日」までと1年延長されています。
一般措置 | 特例措置 | |
対象株式 | 発行済議決権株式総数の3分の2まで | 全株式 |
適用期間 | なし | 2027年12月31日まで |
特例承継計画の提出 | 不要 | 必要 |
納税猶予割合 | 贈与100%、相続80% | 100% |
後継者 | 筆頭株主である後継経営者1人のみ | 持ち株10%以上の後継経営者3人まで |
雇用確保条件 | 5年平均で相続・贈与時の80%以上を維持 | 実質撤廃 |
相続・贈与から5年後以降の減免要件 | 民事再生や会社更生の際、その時点での評価額で相続税・贈与税を再計算し、超える部分の猶予税額を免除 | 「経営環境の変化を示す一定の要件」を満たす場合、譲渡や合併による消滅・解散時にも一般措置と同様の減免を導入可能 |
事業承継税制の手続きの流れ
相続税の場合
- 特例措置を利用したいときは、特例承継計画を都道府県庁へ提出します。
- 相続が始まった後、8ヵ月以内に都道府県庁へ事業承継税制の利用申請を行います。
- 審査の結果、都道府県庁から認定書が手渡されます。
- その認定書のコピーとともに相続税の申告書などを税務署へ提出します。
- 納税猶予額や利子税額に相当する担保を提供します。特に、特例の対象となる非上場株式全てを担保として提供することで、適切な担保とみなされます。
これにより、納税猶予期間がスタートします。しかし、納税猶予が開始されてからも続く手続きがあります。
5年後:
・毎年、都道府県庁へ「年次報告書」を提出します。
・税務署へ毎年「継続届出書」を提出します。
5年を超えてから:
・税務署へ3年ごとに「継続届出書」を提出します。
後継者が次の世代へ「猶予継続贈与」を行うと、相続税は免除されることがあります。また、5年が経過する前に特別な事情で代表権を失い、「猶予継続贈与」を実施したり、会社が破産や清算の危機に立たされたり、後継者が亡くなった場合も、相続税は免除の対象となります。
贈与税の場合
贈与税の納税猶予の手続きは、基本的に相続税の場合と変わりません。事業承継税制の申請の締め切りは、贈与が成立した年の翌年の1月15日までです。ただ、先代経営者が亡くなった時、贈与税は免除されるものの、相続税の納税が必要になる場面もあります。この際、特定の手続きで、相続税の納税猶予に切り替えが可能です。
事業承継税制を活用するための条件
1.先代経営者の条件
• 会社代表者であること
• 相続または贈与直前に、親族を含めた議決権の過半数を有し、筆頭株主であること
• (贈与時)贈与とともに代表を退く(ただし、給与を受ける役員はOK)
2.後継者の要件
• 相続や贈与時、後継者とその親族の議決権が過半数になること
• 1人の後継者は最多の議決権を、2〜3人は議決権の10%以上を保有し、関係者の中で最も多い議決権を持つこと
• (贈与時)20歳以上(2022年4月1日からは18歳以上)、贈与前に3年以上役員経験あり、代表者であること
• (相続時)相続前が役員で、相続から5ヵ月後に代表者になること
3.会社の要件 • 中小企業であること • 従業員が1人以上いること
• 上場や風俗営業をしていないこと
• 資産管理会社に該当しないこと
4.事業承継税制開始後の継続条件
<初めの5年>
• 後継者が代表者であり、筆頭株主であること
• 対象の株式を保持し続けること
• 雇用を5年平均で8割以上維持すること
<5年後>
• 対象の株式を保持し続けること
特別な措置として、雇用の維持が難しい場合でも、認定支援機関の助言を基に報告書を提出すれば、納税猶予が続行されることもあります。
事業承継税制を活用する際の注意点
事業承継税制において、納税猶予がスタートした後の管理も大切です。
猶予期間中に指定された取り消し事由に当てはまると、納税猶予された税金とその利子を支払わなくてはなりません。
以下は、よくある取り消し事由を示しています。
• 後継者が代表者を退いた(ただし、重い障害や要介護など特別な事情がある場合は除く)
• 一族内での議決権数が過半数を下回った
• 後継者との同族者が、後継者よりも多い議決権を持つようになった
• 猶予対象の株式を他者に譲渡した
• 総収入がゼロとなった
• 資本や準備金が減少した
取り消し事由は、相続や贈与を問わず20項目以上存在しますので、注意深く管理することが大事です。 詳細については、国税庁や中小企業庁の公式ページを参照してください。